30代女性半年前から続く右股関節痛

30代女性が半年前に久しぶりに行った運動の後から股関節に違和感を訴えるようになり、現在痛みが強いため当院に来院した。
症状は右股関節から前側の鼠径部にかけて広がる違和感と痛みで歩いた時は違和感が少しあり、仕事で座っているとジワジワと続く鈍痛が常にある。そのせいで最近は右臀部と腰にも違和感を感じるようになった。

しばらく歩いていると、鼠径部に違和感が出て徐々に股関節の方に広がっていく。痺れなどの症状はないが、この半年間常にある股関節の違和感で精神的に参っていると言っていた。

3年ぶりのフットサル後右股関節に違和感を訴え始め、長く続いたため病院を受診した。「まずはレントゲンを撮りましょう」と医者に言われ、撮影後「特に骨には異常が見られないので湿布の処方をしておきましょう。後は痛み止めも出しておきますか?」と言ったことを言われ、痛み止めと湿布を処方してもらい様子を診たが特に良くならず、2回目も行ったが同じ事を言われたので、「このまま通院してもしょうがない」と判断し、ネットで同じような症状を検索してマッサージや整体に数店舗数回ずつ通ってみた。薬を飲むよりは効果はあったがやはり違和感は翌日から出始め、数日すると全く同じような状態に戻ってしまっていた。

カイロプラクティックはまだ試したことが無く、「整体と何が違うのかな?」と思いつつGoogle Mapで検索していたところ当院を見つけ、口コミも良くHPの作りもしっかりしていたので「試してみよう」と思い当院に来院した。


【検査内容】

問診:3年ぶりにフットサルを行ってから徐々に股関節の症状が強くなり、今は慢性化している状態である。このような状態は今までに経験なく、上記したような経過を辿り当院を受診した。

痛みは激痛では無いものの、常に違和感を感じるため精神的にもかなりストレスがかかっているようであった。

現在は鼠径部にも痛みや違和感を感じることがあり、歩いていると股関節の前側が違和感が強い。

視診:問診の際に座っている状態で話を聞いていたが、無意識に左に偏っているような状態で座っている。

仰臥位(上向)で寝てもらうと、右つま先が明らかに外を向いている

スタティックパルペーション(静的触診)

右股関節外転筋群の緊張がかなり高く、内転筋の緊張低下仰臥位では、臀部の高さと形の違いが顕著に見られた。

モーションパルペーション(動的触診)

腰部屈曲伸展動作で痛みの誘発は見られず、正常可動域であった。

仰臥位股関節可動域検査:屈曲時に鼠径部に違和感。外旋/外転時にもどうような違和感の誘発あり

立位股関節可動域検査:伸展を含む全ての可動域で臀部/股関節/鼠径部に違和感が出る

因みに健側(症状がない左側の股関節)検査時も、右足に全体重が加わることで痛みの誘発が見られ、骨盤の顕著な右側方移動(右側にお尻が流れていくこと)が見られた。

オーソペディックス(整形学検査法)

トレンデレンブルグ:右(+)パトリック テスト:(+)ラガレー サイン:(+)

トーマス テスト:(ー)ナクラス テスト:(ー)だが四頭筋が伸びない イリー テスト:右(+)

筋力検査

大腿四頭筋・腰方形筋・内転筋・ハムストリングなどは5/5の筋力を発揮しており正常であった。

中小臀筋・腸腰筋は右側4/5評価でやや筋力低下が見られた。


【施術内容】

この方の症状は、フットサルをプレイした際に鼠径靭帯炎を起こしたであろうことが予測できた。病院では特に診断をつけられた記憶がなかったという話であったが、この方の症状はグロインペイン(鼠径部痛症候群)だと思われる。(日本国でカイロプラクティックには診断権を有しないため、あくまでも仮説)

グロインペインには色々な問題に起因した要因がある。(症候群と言われるのはそのためである)

上記した検査結果を元に、症候群の中でも可能性が最も高いのが鼠径靭帯に起因しているという仮説のもとで施術を開始した。

右股関節の可動域をチェックしたところ、股関節外旋時に顕著な違和感が出るような状態であったため、鼠径靭帯が引っ張られるストレスを解放する必要があった。

・恥骨付近から下前腸骨棘にかけて付着する鼠径靭帯の柔軟性を回復させる施術を施した。

・股関節外旋変異が診られたため、日常的に骨盤が外に開くような状態が起こっているであろうと推測し、股関節を内旋方向に修正及び骨盤が後外方変位を起こしているため矯正によりこれを修正。

・股関節外旋を作る臀筋群・大腿四頭筋外側頭・大腿筋膜張筋などの筋群の緩和を行なった。


【施術予後】

初回:上記施術を施した後に状態を確認してもらった。他動検査(患者に力を抜いてもらいコチラが動かす)でも症状の再発があったが、施術後は消失していた。患者主観の感覚で症状がかなり改善していた。経過観察が必要だったので1週間後の来院を伝えて終了。

2回目(1週間後):その後通常歩行で違和感がなくなっていたが、来院2日前にフットサルをやったらそこで再発。同じくらいの痛みの誘発が診られた。

施術は同様の施術を基本に、膝関節も施術範囲に広げ、膝窩筋の緊張と膝蓋骨の可動が健側(左膝)に比べると悪かったため施術対象とした。

痛みの誘発が診られたため1週間後に来院してもらうことにした。

3回目(1週間後):今回もフットサルをしたが痛みの誘発が少なく、違和感程度に治っていた。施術は前回と全く同様の施術を行い、今回はフットサル後でも痛みの軽減が診られたため、2週間に間隔を空けて様子を見てもらうことにした。

4回目(2週間後):日常生活での痛みは消失。来院までに合計2回のフットサルをプレイしたが、痛みの軽減が良好であった。

スパインでのカイロプラクティック施術を始める前の痛みが10だとしたら、フットサル後でも3〜4/10くらいにまで下がっていた。

このような状態から範囲をさらに腰部〜背部に広げて、身体全体的な柔軟性と可動域をつけていく施術に切り替え現在継続中である。

そろそろカイロプラクティック治療期を終了し、月1回のメンテナンス期に移行して行っても良いだろうと判断し、今後の経過を観察していく。


【施術者の見解】

この方の症状は典型的なグロインペインに起因する症状であった。グロインペインはサッカーなどの体幹のみでなく、股関節・骨盤・膝(足首)も多く使うスポーツに発症しやすい。このスポーツのリスクとして(多くのスポーツに共通することではあるが…)、反射的に予測不能な方向への転回(急に反対方向に身体を移動する/捻るなど)の動きを伴うので、股関節や膝にかかる瞬間的に多大な負担が加わることで、靭帯/腱/軟骨/関節自体に負担が加わり、受傷してしまう場合がほとんどである。急性期の場合はそれが炎症反応として起こり、自発痛や動作時痛を強く出してしまう。

幸いなことにこの方の症状は炎症性のものではなかったので初回からある程度積極性を持った施術を行えた。このような症状の方の場合慢性的な緊張状態がさらなる関節の可動制限を作り、そこでさらに他の筋群が緊張を起こすといった「負のループ」を作り出しやすいです。

施術により周囲軟部組織の緊張を緩和させる必要はあるのですが、それでは決して根本の解決にはなりません。
なぜ右側の筋群の緊張が過度になるのか?そしてその影響が関節の可動性にどのような影響を及ぼすのか?などをしっかり分析し、根本的な改善を行っていく必要があります。

今回の症例は現在も継続してご来院していただいています。症状はほぼ完治しているのですが、それは「今後同じような生活を送っても、このような症状には2度となりません」というわけではないからです。

日々蓄積していく肉体的精神的負担を定期的に取り除いていく事こそ本来あるべきカイロプラクティック医療の姿勢だと考えます。

皆さんも日々のセルフケアを行なってください。それでも全てを補えるわけではないので、定期的なプロのケアも取り入れて健康な毎日を送るように努めましょう。

もし股関節のや腰痛、恥骨の痛みやスポーツ後の痛みなどでお困りの方は、馬車道駅6番出口徒歩1分・JR関内・桜木町駅徒歩10分の立地にあるスパインカイロプラクティックにご来院ください。誠心誠意知識と技術を持ったカイロプラクティック治療で皆さまの健康に寄与させていただきます。